求人サイトで「未経験歓迎・学歴不問」の求人を開く。仕事内容まで読んで、応募ボタンの前で手が止まる。会社名で検索してみても、出てくる口コミは数件だけ。入社したらどんな職場なのか分からないまま、画面を閉じたことがある人もいるはずです。

正社員として働いた経験がない期間が長くなると、自分にはもう正社員の仕事がないのではないかと考えやすくなります。

統計を見ると、少し違う変化も出ていました。総務省統計局の「労働力調査(詳細集計)2025年平均結果」では、こうなっていました。非正規の職員・従業員は2128万人。このうち、現在の雇用形態を選んだ主な理由として「正規の職員・従業員の仕事がないから」と答えた人は173万人で、割合は8.4%でした。内訳は男性85万人、女性88万人。この人数は、比較できる2014年以降、男女とも12年続けて減っています。

もちろん、この数字だけで正社員になりやすくなったとまでは判断できません。173万人の年齢別の内訳も、この資料には掲載されていませんから。非正規で働いている人の全員が、正社員の仕事を見つけられなかったから今の働き方をしている、というわけでもありません。

応募するか決められない理由が、会社のことを調べても分からないからであれば、求人票の読み方だけを変えても解決しません。離職率や職場の状況は、求人票に書かれていないことがあります。

既卒やフリーターが応募するときには、会社に職場情報の提供を求められる仕組みが法律で設けられています。使える場面には条件があるため、次の節から、どんな情報をどの会社に求められるのかを確認していきます。

求人票に書いていないことは、会社に出させられます

会社名を検索しても職場の様子が分からないとき、応募者の側から会社に情報を求められる制度があります。根拠になっているのは、若者雇用促進法と呼ばれる「青少年の雇用の促進等に関する法律」です。対象となる募集に応募しようとする人が求めた場合、会社には青少年雇用情報を提供する義務があります。

努力義務ではありません。会社が出すかどうかを自由に決められる、というものじゃないんです。会社がハローワークや転職エージェントに求人を出している場合も同じです。紹介を受けようとする人から求められれば、会社は情報を提供しなければなりません。

対象に含まれるのは、学校や専修学校を卒業した人、各種学校や外国の教育施設を卒業した人、公共職業訓練を修了した人です。法律のこの条文には、卒業してから何年以内という上限は書かれていません。

求められる情報は三つの系統に分かれていて、あとで出てくる「制限」もこの分け方に関わってきます。

(1)採用と離職に関する情報

  • 直近3事業年度に採用した新規学卒者等の人数
  • そのうち離職した人数
  • 男女別の採用人数
  • 働いている人の平均継続勤務年数

求人票を読んでも分からなかった、入社した人がどのくらい辞めているのかは、ここに入ります。直近3事業年度という区切りは、あとで出てくるユースエールの基準と同じです。

(2)入社後に仕事を覚えたり相談したりするための制度

  • 研修や自己啓発支援の有無と内容
  • メンター制度
  • キャリアコンサルティングを受ける機会
  • 社内検定など

未経験で入ったあと会社が何を用意しているのかは、ここで分かります。研修の有無だけじゃなくて、その内容まで対象です。

(3)働き方や職場への定着に関する情報

  • 直近の事業年度における月平均の所定外労働時間
  • 有給休暇の平均取得日数
  • 男女の育児休業の取得状況
  • 役員や管理職に占める女性の割合

求人票に載っていなくても、この三つの系統に入る職場情報は、求めれば会社が出さなければならないものです。ただ、そのまま使えるかというと、ちょっと違います。

この仕組みには制限が3つあります

ここまで読むと、応募前に離職者数や残業時間を聞けば済むように見えます。ですけど、実際はそう単純じゃありません。使える求人も、返ってくる情報も、聞き方も限られているんです。

制限1|使えるのは、新卒・既卒を対象にした求人だけ

会社に提供義務が生じるのは、学校卒業見込者等を対象にした募集や求人に応募するときに限られます。新卒や既卒を対象にした枠では使えますが、年齢や実務経験などを条件にした通常の中途採用へ応募するときには、この法律による提供義務は生じません。

制限2|聞いた項目が、そのまま返ってくるとは限らない

会社は、上の三つの系統について、それぞれ一つ以上の情報を出せばよいと定められています。

たとえば離職した人数を知りたいと求めても、会社が同じ系統にある男女別の採用人数を提供すれば、法律上の義務を果たしたことになるんです。知りたい項目を指定すれば必ずその数字が返ってくる、そういう制度ではありません。

制限3|匿名では求められない

情報を求める側にも条件があり、氏名と住所またはメールアドレス、学校等の名称、在学年または卒業した年月、それに青少年雇用情報の提供を希望することを、会社に明らかにすることになっています。情報は電子メールや書面などの方法で提供されます。

応募前に利用する場合でも、自分の名前や卒業年月は会社側へ伝えることになるわけで、ここで足が止まる人もいるでしょう。

権利はあります。ただ、聞けば欲しい数字がそのまま出てくる制度ではないので、どの求人で使えるのか、知りたい情報がどの系統に入っているのかを見てから使うことになります。

聞くより先に、すでに出している会社を探す

会社に名前や卒業年月を伝えて情報を求める前に、自分で確認できる場所があります。厚生労働省が運営する「若者雇用促進総合サイト」。

若者雇用促進法に基づいて職場情報を提供している企業を検索できるデータベースで、2026年9月12日時点の掲載社数は、認定企業と一般企業を合わせて2876社でした。内訳はユースエール認定企業が2127社、一般企業が749社です。

掲載企業について確認できるのは、採用した人や離職した人などの採用・定着状況、残業時間や有給休暇の取得状況、人材育成に関する情報です。前の節で会社に求められると説明した情報を、自分から公開している企業があります。ここを見るだけなら、会社に氏名や卒業年月を伝える必要はありません。

検索条件も細かく指定できて、企業区分(ユースエール認定、くるみん、えるぼしなど)、求人区分(高卒・大卒等・一般)、従業員数、産業20分類、職種11分類、エリアで絞り込めます。同じサイトから、厚生労働省の「職場情報総合サイト しょくばらぼ」にも行けます。

会社に情報を求める方法は、応募先の候補が決まってから使うものでしょう。まだ決められない段階なら、順番を逆にして、自分から職場情報を出している会社の中から応募先を探すほうがたぶん楽です。

ユースエール認定は、既卒にとって意味が違います

求人一覧で会社名の横に認定マークが付いていても、それだけで応募先を決める人は少ないと私は思います。既卒で求人を探している人にとって、ユースエール認定には確認しておきたい条件があります。

ユースエールは、若者雇用促進法に基づいて、常時雇用する労働者が300人以下の中小企業を厚生労働大臣が認定する制度です。大企業はそもそも対象に入りません。

既卒を3年間、新卒枠で受け付けていることが条件に入っている

認定基準には、学校などを卒業または修了した年度の翌年度以降、少なくとも3年間は応募できることが含まれています。既卒者を3年間、新卒枠で受け付けていることが認定の条件なんです。

求人票に「既卒可」と書いてあるかを一社ずつ探すのはしんどい作業ですが、認定企業なら、認定を受ける段階でこの条件が確認されています。

職場の状況にも基準がある

  • 直近3事業年度に採用した新規学卒者等のうち、同じ3事業年度に離職した人の割合が5分の1以下(採用者が3人または4人なら、離職者は1人以下)
  • 月平均の所定外労働時間が20時間以下
  • 月平均60時間以上の時間外労働をしている人が1人もいない
  • 有給休暇の取得率が10分の7以上か、1人当たり平均10日以上
  • 育児休業は、直近3事業年度に男性の取得者が1人以上いるか、女性の取得率が4分の3以上
  • 人材育成方針と教育訓練計画を作っている
  • 採用・離職、労働時間、人材育成といった前の節で扱った職場情報に当たる項目を、インターネットなどで公表している

認定を受けられない条件もある

過去1年間に退職勧奨をした会社や、本人に責任のない理由で解雇した会社は対象になりません。離職した人数だけを見る制度ではなく、会社側から辞めてもらう対応をしていないかも認定時に見られています。

求人票で会社が自ら「既卒可」と書くことと、ユースエール認定を受けていることは同じではありません。後者は、既卒者が応募できる期間を含む複数の基準について、行政の認定を受けた会社です。

認定企業は、住んでいる県によって数がまったく違います

ユースエール認定企業だけに絞って求人を探すと、住んでいる地域によっては候補がかなり少なくなります。

2026年9月12日に厚生労働省の認定企業一覧を都道府県ごとに数えたところ、合計はサイトに記載された2127社と一致しました。多いほうから北海道177社、新潟県130社、東京都93社、山形県90社、佐賀県81社。反対に少ないほうは沖縄県13社、鳥取県18社、山梨県20社、茨城県21社でした。ちょっと意外な並びです。

会社名にも偏りが見えました。建設、土木、工務、工業、建材、設計、舗装、電設、工事、測量など、建設・土木系と考えられる語を社名に含む会社を数えると884社で、全体の41.6%にあたります。

北海道では177社中115社、東京都では93社中12社と、地域でも開きがありました。

これは会社の業種を分類した数字ではありません。あくまで認定企業の社名に指定した語が含まれるかを数えた結果です。

公式サイトの検索機能では業種別の件数を取得できなかったので、本当の業種別内訳は分からないまま。

認定企業から探すのは、既卒で応募できる会社を見つける手段の一つです。ただ300人以下の中小企業に限った制度なので、地域や希望する仕事によっては候補がすぐ尽きます。少なければ、認定企業だけで探し続けなくていいです。そこで粘るのは時間がもったいないです。

求人票の書き方から会社を見分ける方法は、ブラック企業は求人票のどこで分かるかに書いています。

紹介が来ないのは、あなたの経歴だけの問題ではありません

転職エージェントに登録して、経歴や希望条件まで入力したのに、求人の紹介が来ない。そんな経験があると、自分の経歴では紹介できる仕事がないのだと考えてしまいがちです。正直、落ち込みます。

ただ紹介会社の側を見ると、それだけでは説明できない数字があります。厚生労働省の「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」では、事業報告を提出した有料職業紹介事業所は30561事業所で、このうち1年間に就職実績があった事業所は13946事業所でした。

過半数の事業所は、その年度に1件も就職を決めていないことになります。許可を持っていることと、実際に就職を決めていることは別なんです。企業がエージェントに払った常用就職1件当たりの手数料は平均で約103万円、前年度より10.9%増えました。求職者は無料でも、企業側ではこれだけの費用が動いています。

この費用が誰から誰に払われているかは、転職エージェントの仕組みで図にしています。

紹介会社を選ぶときに確認できる制度もあります。厚生労働省委託事業の「職業紹介優良事業者認定制度」では、法令遵守に加え、採用、定着、マッチングについて一定の基準を満たした事業者を認定しています。2026年9月12日時点の認定事業者は57件でした。

マイナビ、パーソルキャリア、リクルートエージェントを運営する会社、エン、パソナ、ワークポート、株式会社ジェイックなどが含まれています。このうち株式会社ジェイックは、フリーター・既卒・中退者向けの「就職カレッジ」を運営しています。

有料職業紹介事業の許可番号は13-ユ-010450、優良事業者の認定番号は第2102005(04)号(認定期限 2028年2月29日)。設立は1991年3月で、社員数は228名(2026年1月末)です。

JAIC就職カレッジ

ここで30561は事業所数、57は会社単位の事業者数なので、両者を割って割合を出すことはできません。認定制度も申請制のため、認定されていない会社が悪いという意味ではありません。

登録しても紹介が来ないときは、自分の経歴だけを理由にしないで、その紹介会社に就職実績があるか、認定を受けているかも見てください。会社を選び直すかどうかは、それで決められるでしょう。

20代向けに絞った比較は20代の転職エージェントにあります。

ここまでの話が効かない人もいます

ここまでの方法がそのまま使えるのは、新卒・既卒を対象にした募集へ応募する場合です。希望する仕事が通常の中途採用でしか募集されていなければ、会社に青少年雇用情報を求める義務は生じません。

職場情報を確認したくても、この制度は根拠に使えないということです。

ユースエール認定にも対象の範囲があります。従業員300人以下の中小企業に限られるため、大企業が認定を受けていなくても、それ自体は判断材料になりません。

認定は申請制で、書類を用意して手続きをする必要があります。基準を満たす会社がすべて申請しているわけではないため、認定がないことだけで職場の状況を判断することもできません。

認定を受けた会社についても、認定後に職場の状況が変わることはあります。認定事業主には毎事業年度終了後1か月以内の状況報告が求められ、基準に適合しなくなった場合は都道府県労働局長に申し出ることができる仕組みです。

それでも、認定企業なら安心だと決めるための制度ではありません。

新卒・既卒枠で探せる人には、ここまで紹介した方法を使えます。当てはまらない人も、若者雇用促進総合サイトで、自分から職場情報を公開している会社がどんな情報を出しているのかを見ることはできます。

未経験の求人がどう作られているかは未経験歓迎の求人は誰に向けて書かれているかに、学歴を理由に迷っている場合は学歴に不安があるときの転職に書いています。

何をひとつ聞くかを、先に決めておく

会社に職場情報を求めるなら、連絡する前に何を知りたいのか決めておいたほうが使いやすいでしょう。企業は、採用、能力開発、職場への定着という三つの系統から、それぞれ一つ以上の情報を提供すれば義務を果たせます。

同じ系統から二つ聞いても、両方が返ってくるとは限りません。ここがちょっと厄介です。

系統ごとに候補を挙げると:

  • 採用や定着状況を知りたいとき:直近3事業年度の採用数と離職数、または平均継続勤務年数
  • 未経験で入ったあとの教育が気になるとき:研修の有無と内容、新入社員に相談役を割り当てる制度の有無
  • 働き方を確かめたいとき:月平均の所定外労働時間と有給休暇の平均取得日数

一つの系統に質問を集めるより、自分が気になる情報を系統ごとに一つずつ選んでおくほうが、得られる情報を増やしやすくなります。

会社へ求める際には氏名や卒業年月などを伝えなければなりません。応募前にそこまで伝えるのはちょっと抵抗がある、という人は、若者雇用促進総合サイトで公開済みの情報を確認する方法があります。

会社へ聞く場合は、三つの系統のどこから何を一つ確認したいのかを先に決めておくと、質問を整理できるでしょう。

自分だけで進めにくければ、公的な相談先もあります。新卒応援ハローワークは、就職活動中の学生・生徒と、卒業後おおむね3年以内の人が対象。わかものハローワークは、正社員での就職を目指すおおむね35歳未満の若者が対象で、就業経験が少ない人や離転職を繰り返している人の相談にも対応しています。

応募する前に、ひとつだけ確かめる

応募ボタンの前で止まったとき、引っかかっているのは経歴のほうなのか、会社の中身が見えないことなのか。この二つは別の問題です。経歴はすぐには変えられません。ですけど、会社の情報のほうは今晩からでも探せます。

厚生労働省の若者雇用促進総合サイトを開き、自分の都道府県で検索してみてください。採用や離職、残業時間、有給休暇、人材育成について、自分から情報を公開している会社を確認できます。応募先をまだ決めていない段階でも使える方法です。

新卒・既卒枠の求人なら、会社に何を一つ聞くかも決めておけます。ひとつで十分です。離職の状況か、入社後の研修か、残業時間か。書かれていないから諦める、の前に、調べれば出てくるものがないか一度当たってみてください。


この記事で使った資料

  • 青少年の雇用の促進等に関する法律(昭和45年法律第98号/若者雇用促進法)第13条・第14条 — e-Gov法令検索(2026-05-13施行版・2026-09-11取得)
  • 青少年の雇用の促進等に関する法律施行規則(平成27年厚生労働省令第155号)第2条・第3条・第4条・第7条 — e-Gov法令検索(2026-09-11取得)
  • 厚生労働省「若者雇用促進総合サイト」ユースエール認定企業一覧・企業検索 — wakamono-koyou-sokushin.mhlw.go.jp(2026-09-12取得。掲載社数は同日の表記、都道府県別の内訳は当サイトで集計)
  • 厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」(令和8年3月31日公表) — 厚生労働省
  • 厚生労働省委託事業「職業紹介優良事業者認定制度」認定事業者一覧 — jesra.or.jp(2026-09-12取得)
  • 総務省統計局「労働力調査(詳細集計)2025年平均結果」 — 統計局
  • 厚生労働省「新卒応援ハローワーク」「わかものハローワーク」 — 厚生労働省