「障害者雇用 求人」で検索して、求人サイトやハローワークの求人を10件ほど開く。仕事内容を読んでも、事務補助や軽作業など似た募集が並び、どこを基準に選べばいいのか、見ているうちに分からなくなってきます。
障害者雇用枠の求人は、応募する人の経歴より先に、「この会社はあと何人採用する必要があるか」という数字から決まっていることがあります。
だから求人票を読み比べても、会社ごとの違いが出てこないんです。見るなら、自分がその会社で何人目の障害者雇用になるのか、そこです。
私は転職エージェントを5年、事業会社の人事を3年経験し、現在は人事・採用の外部コンサルをしています。人事では障害者採用も担当しました。
この記事では、手帳の取り方や就労移行支援の使い方は扱いません。企業が障害者雇用の求人を出すまでに社内で何を決めているのかを、厚生労働省の数字と採用側の事情から見ていきます。
求人は、その会社に「あと何人足りないか」で出ている
毎年6月1日現在の障害者の雇用状況を、企業は国に報告する義務があります。その前に人事は自社の社員数を数え、法定雇用率をかけて、何人足りないのかを小数点まで確認します。
そこで出た不足人数を経営会議に持っていき、それから採用の枠を取る、という順番です。
2026年7月から、民間企業の法定雇用率は2.7%。従業員37.5人以上の会社には障害者を雇用する義務があります。採用はこの計算から始まるんです。どの会社も最初から何人も採るつもりで求人を出しているわけではなく、そこは求人票からはなかなか見えません。
厚生労働省の2025年6月1日時点の集計を見ると、法定雇用率を達成していない企業は65,033社で、そのうち不足している人数が0.5人または1人の会社が64.0%でした。未達成の会社の大半は、あと1人で届く位置にいるわけです。
障害者雇用の求人に「1名募集」が多いのは、この事情からです。会社側にはお金も絡みます。
従業員100人超で法定雇用率を達成できていない場合は、不足1人につき月5万円(年60万円)の障害者雇用納付金を納めなければなりません。逆に達成している100人超の会社には、一定の条件のもとで1人あたり月29,000円の障害者雇用調整金が支給されます。
転職する側も、これは知っておいて損はありません。募集の理由が「あと1人足りない」なら、その1人が決まった時点で採用する理由がいったん消えます。
昨日まで出ていた求人が急に閉じるのはそういうときもあって、応募者への評価が変わったとは限りません。落ち込む必要はないです。
同じ「障害者雇用の求人」でも、会社にすでに何人いるのか、自分を採用すると何人目になるのかで、採用の進め方は変わります。求人票の仕事内容や条件だけではその違いが見えにくいので、次に見たいのは、その会社が障害者雇用を何人で進めているかです。
自分が「何人目」になるかで、入ったあとが変わる
面接に人事しか出てこず、配属される部署の人が同席していない会社があります。逆に、すでに何人も障害者を雇用している会社では配属先の上司が面接に入ることがあり、実際に担当する作業や勤務時間の話も具体的に出ます。同じ障害者雇用の求人でも、面接の席に誰がいるかは見ておきたいところで、受け入れの準備がどこまで進んでいるかが、そこから見えることもあるでしょう。
未達成企業の57.3%は、まだ1人も雇用していない
厚生労働省の2025年6月1日時点の集計では、法定雇用率を達成していない65,033社のうち、障害者を1人も雇用していない企業は37,262社で、未達成企業の57.3%にあたりました。
応募先によっては、自分が初めて採用される1人になることもあり、珍しい話ではありません。初めて受け入れる会社では人事が先に採用を進めることがあって、配属先や具体的な仕事がまだ決まっていない、ということも起きます。
その場合、入社後の仕事を会社と一緒に考える立場になりやすく、裁量が出る反面、確認や調整を自分でする場面は増えます。受け入れ実績のある会社と違うのはこのあたりです。
会社の規模でも状況は違う
集計時点の法定雇用率は2.5%で、実雇用率を企業規模で並べると次のとおりです。
- 1,000人以上: 2.69%
- 500〜1,000人未満: 2.41%
- 300〜500人未満: 2.27%
- 100〜300人未満: 2.18%
- 40〜100人未満: 1.94%
上回っていたのは一番大きい区分だけ。1,000人以上だけが2.5%を超えています。
すでに何人も働いている会社では、配属先や仕事内容が先に決まっていることが多い。特例子会社という形で受け入れている企業もあります。国の認定を受けた特例子会社は631社、そこで働く障害者は53,710.5人でした。
求人票だけでは、この違いまでは見えません。面接に配属部門の人が出てくるか、その会社が障害者雇用の求人を毎年のように出しているのか、それとも今回だけなのか。そこまで見ると、入社したあとの状況を考えやすくなります。
初めての1人として仕事から一緒に作りたい人もいれば、仕組みができている会社で決まった仕事をしたい人もいます。どちらが良いという話じゃなくて、自分がどちらで働きたいか、です。
枠は増えているのに、就職率は下がっている
ハローワークの障害者専門の窓口では、新しく求職を申し込む人が毎年増え続けています。2025年度は新規求職申込が278,136件で過去最高、前年度より3.7%増えました。
一方の就職件数は115,178件で前年度より0.4%減、就職率は41.4%で前年度から1.7ポイント下がっています。
窓口に来る人は増えているのに、就職した人は増えていません。応募する側も増えているからです。
法定雇用率が上がり、企業が採用しなければならない人数は増えていますが、それだけを見て「障害者雇用枠なら以前より受かりやすい」とは言えないでしょう。
なかでも精神障害者の人数が多く、165,316件・59.4%と新規求職申込の6割近くを占めます。身体障害者は21.2%、知的障害者は14.1%です。
同じ求人を検討する人がそれだけ多いということで、就職率も前年度から2.5ポイント下がりました。障害種別で見ると、知的障害者56.5%、精神障害者40.3%、身体障害者36.3%で、身体障害者がいちばん低い。
身体障害者の就職件数は21,463件で、前年度より5.5%減りました。採用枠が増えたから応募すれば決まりやすい、と考えるには難しい数字だと思います。
なお、厚生労働省は就職件数が減った要因として、就労継続支援A型事業所への就職件数が前年度より減ったことなどを挙げています。だから、この数字だけで一般企業の障害者雇用が一律に厳しくなったとは判断できません。
それでも、求職者が278,136件まで増えながら就職率が41.4%まで下がっているのは事実です。企業の枠が増えることと自分が採用されやすくなることは別で、求人の数だけ見ていてもそこは分かりません。
その枠に何人が応募しているのかまで含めて見る必要があるでしょう。
募集される仕事は、はっきり偏っている
求人票を並べていくと、業種と職種が似てくることに気づきます。医療・福祉の法人、事務の補助、清掃や仕分けの仕事といった具合です。前の職場で専門的な仕事をしていた人ほど、自分の経験をそのまま使える求人がないという相談は、正直多いです。
実際の就職先にも偏りがあります。2025年度の障害者の就職件数を職業別に見ると、この上位2つだけで半数を超えます。
- 運搬・清掃・包装等: 29.5%
- 事務: 25.9%
続くのがサービスの職業14.4%、生産工程10.7%、専門的・技術的職業7.3%です。
障害の有無を問わないハローワーク全体と比べると、違いがはっきりします。運搬・清掃・包装等は障害者29.5%に対して全体16.3%で約1.8倍、専門的・技術的職業は障害者7.3%に対して全体14.2%で約半分です。
前職で専門職として働いていた人が求人を探しても、同じ仕事を続けられる募集は相対的に少なく、数字にもその違いが出ていました。
障害種別で分けると、最多の職業が入れ替わります。知的障害者は運搬・清掃・包装等が43.3%で最多、身体障害者は事務が30.5%、精神障害者も事務が29.3%で最多でした。
就職先の産業では医療・福祉が38.8%、44,683件を占めています。ハローワーク全体では27.2%なので、障害者雇用では医療・福祉への集中がより大きい。精神障害者に限ると41.4%です。
医療・福祉の次に来るのが製造業の11.6%ですが、差は大きい。サービス業(他に分類されないもの)が11.0%、卸売・小売業が9.7%と続きます。
企業が障害者雇用の枠を作るとき、社内で切り出しやすい業務から募集を組むことがあります。探す側からは、ちょっと見えない事情です。前職と同じ専門職が障害者雇用枠に見つからないのは募集の側の話で、本人にその仕事を続ける力がないという話ではありません。
専門職を続けたいなら、障害者雇用枠だけを見なくていいです。一般枠に同じ職種がないかも並べて見る。どちらの枠にするかは本人の状況で変わります。希望の職種が見つからないとき、見直すのは自分の経歴より先に、その枠でそもそもどんな仕事が募集されているのかのほうです。
配慮の話は、選考の途中で出していい
面接の終わりに「何か質問はありますか」と聞かれます。通勤時間や通院のこと、体調が崩れやすい時間帯のことを言おうか迷って、不安なまま面接を終える人も多いです。採用されてから相談したほうが安全だろう、と考えるからでしょう。
制度上は選考中に配慮について相談することが想定されています。障害者雇用促進法では、事業主に障害者への差別の禁止と合理的配慮の提供義務が定められています。厚生労働省の指針でも、募集や採用の段階から合理的配慮の対象です。ここは意外と知られていません。
働く時間についても制度が変わっています。2024年4月から、雇用率への算定方法が変わりました。
- 週10時間以上20時間未満の精神障害者・重度身体障害者・重度知的障害者: 0.5人として算定(それまでは20時間以上でなければ算定されなかった)
- 週20時間以上30時間未満の短時間労働者: 原則0.5人として算定
- 週20時間以上30時間未満の精神障害者: 当分の間、雇入れからの期間などに関係なく1人として算定
同じ週20時間以上30時間未満でも、精神障害者には当分の間の特例があるため、障害の種別によって会社の雇用率への算定のされ方が異なります。
企業側からすると、短い勤務時間でも雇用率に数えられる範囲が広がりました。短時間の求人なら、週何時間の募集なのかと、入社後に時間を延ばせる余地があるのかを一緒に見てください。
面接では、配慮そのものだけを聞く必要はありません。前に書いた「自分が何人目になるのか」も確認できます。
今その会社で何人の障害者が働いていて、自分はどの部署への配属を予定されているのかが分かると、必要な配慮を誰と相談するかも考えやすくなります。
配慮について話すことは、採用されたあとに条件を追加することとは少し違います。どのような働き方なら続けられるのか、それを会社側が受け入れられるのかを、入社前に双方で確認するための話です。
選考中にどこまで伝えるかは人によって違っていいと思います。ただ、採用が決まるまで配慮の話をしてはいけない、ということはありません。
どう伝えるか考える前に、面接官がそもそも何を見ているのかを知っておくと切り出しやすくなります。
項目の中身まで開いたものが面接官の手元にある評価シートには何が書いてあるかです。
賃金の差は、そのまま労働時間の差でもある
求人票の月給が前職より低いと気づいたとき、障害者雇用枠は給与が低いという話は聞いていても、なぜその金額なのかまでは分かりません。
求人票だけでは判断できないので、厚生労働省の2023年調査の1か月の平均賃金を見ると、身体障害者23万円、精神障害者14万9千円、知的障害者13万7千円でした。
この平均だけを比べると実際の賃金差を読み違えます。働いている時間が同じじゃないからです。
同じ精神障害者でも、労働時間で倍以上ちがう
精神障害者だけを週の所定労働時間で分けると、30時間以上は月19万3千円、20時間以上30時間未満は12万1千円、10時間以上20時間未満は7万1千円と、倍以上の差が出ます。
精神障害者全体の平均は14万9千円ですが、30時間以上働いている人に限れば19万3千円。かなりの差です。平均賃金が低く見える背景には、短い時間で働く人が含まれているという事情があります。
勤続年数も違う
平均勤続年数も種別でかなり違い、身体障害者が12年2か月、知的障害者が9年1か月、精神障害者が5年3か月、発達障害者が5年1か月でした。
勤続期間が違えば、働いている間に昇給する機会にも差が出ます。障害種別ごとの平均賃金を、そのまま能力の差として見ることはできません。
応募するときも、月給だけでは条件を比べきれず、その金額が週何時間働く前提なのかまで一緒に見る必要があります。短い勤務時間から始める求人もあって、その場合は、入社後に所定労働時間を増やせる制度があるのかで、その後の賃金が変わってきます。
月給が低いと感じたときほど、その金額が週何時間の前提なのかを見てから比べてください。給与の幅の広さや「未経験歓迎」の書き方など、障害者雇用枠に限らない求人票の癖は別の記事に書いています。
求人票を書いている側の事情は給与幅・未経験歓迎・急募が、なぜその書き方になるのかに書いています。
求人票の外側を見る
障害者雇用枠は、求人票の仕事内容と月給だけでは入社後の働き方まで読めません。会社がこれまで何人雇ってきたかで、配属先や仕事内容がどこまで決まっているかも、配慮を誰と相談するのかも変わってくるんです。
次に求人を見るときは、条件で絞る前に、その会社で障害者が何人働いていて自分は何人目になるのかを確かめてみてください。書かれていなければ応募前に問い合わせてもいいし、面接で聞いてもいいです。
雇用状況や受け入れ方針まで一人で調べるのは正直しんどいですし、企業に直接は聞きにくいこともあります。そういうときは、間に立つ人に確かめてもらう手もあります。
その相手を探す段階で「登録したのに求人が来ない」ことも起きて焦りますが、それは求人の在庫の問題じゃないことが多いです。
その理由はエージェントから求人が来ないときに、担当者側で起きていることに書きました。
迷ったときに見るのは条件だけじゃなくて、入ったあとどの部署で、どう受け入れられる予定なのか。そこまで分かれば、その会社で働くかどうかを決めやすくなります。
この記事の数字の出典(すべて2026年9月9日に確認)
- 法定雇用率と対象事業主の範囲: 厚生労働省「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」 https://www.mhlw.go.jp/content/001064502.pdf
- 未達成企業数・0人雇用企業・企業規模別実雇用率・特例子会社: 厚生労働省「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」(2025年6月1日現在/2025年12月19日公表) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67490.html
- 新規求職申込件数・就職件数・就職率・職業別・産業別: 厚生労働省「令和7年度 ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況」(2026年6月19日公表) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_73694.html
- 平均賃金・平均勤続年数: 厚生労働省「令和5年度 障害者雇用実態調査」(2023年6月調査/2024年3月27日公表) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39062.html
- 納付金・調整金: 高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用納付金制度の概要」 https://www.jeed.go.jp/disability/about_levy_grant_system.html