求人を見れば、正社員の仕事はあります。それでも、いまの職場で長く働いていると、「正社員になりたい」と上司に言うのは、正直、簡単ではありません。パートや有期契約のまま仕事を覚え、担当する業務も増えているのに、切り出す機会がないまま年数が過ぎていく。焦りますし、もったいないとも思います。この記事で扱うのは、言い出す勇気の話ではなく、会社側に何が決められているかです。

パートタイム・有期雇用労働法には、パートや有期で働く人の正社員への転換について、会社が取るべき措置が書かれています。正社員との待遇の違いは、聞けば説明を受けられます。聞いたことを理由に不利益な扱いをするのも禁止です。言う前に、このあたりを押さえておきましょう。

会社は正社員への転換について、3つのうちどれかを実施する必要がある

パートタイム・有期雇用労働法13条は、会社に正社員への転換を進める措置を求めています。中身は、正社員を募集するときにその内容をパートや有期の人にも知らせる、新しく正社員を配置するときにパートなどから希望を申し出る機会を設ける、正社員への転換試験などの制度を用意する、この三つです。

全部をやる義務ではありません。13条が求めているのは、このうちいずれか。

だから、自分の会社に転換試験が見当たらないというだけでは、13条の措置がないとは言えません。確かめるのは「登用試験があるか」ではなく、うちの会社は三つのどれを選んでいるのか、です。

正社員への転換制度がある企業は、雇用形態によって41.8%から50.1%でした

勤務先に正社員への転換制度があるのか分からなければ、制度自体が珍しいのではないかと思う人もいるでしょう。厚生労働省の令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査では、正社員への転換について「制度有り」と回答した企業は、無期パートで41.8%、有期パートで42.2%、有期フルタイムで50.1%。半分前後です。令和3年10月1日時点の調査なので、2026年から見れば5年前の数字で、今の状況をそのまま示すものではありません。それと、調査の「制度有り」と法律上の義務は別物です。制度がないと答えた企業でも、13条の義務が消えるわけではありません。勤務先に制度の名前が見当たらなくても、そこで終わりにせず、13条のどの措置を取っているのかを見に行きましょう。

転換の基準で最も多かったのは、人事評価の結果でした

正社員への転換制度が見つかると、次に気になるのは何をすれば対象になるのかです。試験があれば、まず試験対策から考える人は多いはずです。先ほどと同じ令和3年の厚生労働省調査では、正社員へ転換する際の基準として最も多かったのは「人事評価の結果」で67.7%。「上司の推薦」が48.8%、「職務経験年数」が41.1%、「面接」が31.9%と続きます。

筆記試験は6.0%でした。複数回答なので足し算はできませんが、筆記試験より人事評価や上司の推薦を挙げる企業のほうがずっと多い。試験の話じゃないんです。そうなると、試験の有無を探す前に、いまの自分の人事評価がどう扱われるのか、上司の推薦が基準に入っているのかを見たほうが早いです。

転換を希望した人がいても、その割合から成功率は出せない

実際に希望した人がどれくらいいたかも、同じ調査に数字がありました。令和3年の厚生労働省調査では、過去3年間に正社員への転換を希望した無期パートがいた企業は28.1%で、そのうち実際に正社員へ転換した人がいた企業は17.2%です。ここ、読み方を間違えやすいんです。28.1%も17.2%も、人ではなく企業の割合で、「希望した人のうち17.2%が正社員になった」という意味ではありません。1社に希望者が何人いて何人が転換したのかは分からないので、正社員になれる確率としては使えません。言えるのは、希望した人がいた企業と、実際に転換した人がいた企業がそれぞれあった、というところまでです。自分が対象になるかは、勤務先の転換の方法と基準を別に確かめるしかありません。

待遇の違いは、求められたときに会社の説明義務が生じる

正社員と同じ職場で働いていても、給与や待遇について自分から聞いたことがない人はいるはずです。パートタイム・有期雇用労働法14条2項では、パートや有期で働く人から求めがあったとき、正社員との待遇の違いについて、その内容と理由を会社が説明しなければならないと定めています。条件は「求めがあったとき」で、黙っていても会社から説明が来る規定ではありません。令和3年の調査では、「求められ、説明をしている」企業は5.6%。「求められれば説明する予定である」が46.5%、「求められなかったが説明している」企業も19.8%ありました。実際に求められた企業より、求められたら説明するつもりの企業のほうがずっと多い。「求められれば説明する」と答えた46.5%の会社は、まだ誰からも聞かれていない会社でもあります。

説明を求めたことを理由に、不利益な扱いをすることは禁止されている

待遇について聞けば、その後の評価に響くのではないか。職場で気まずくなるのではないか。14条3項は、説明を求めたことを理由として、解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないと定めています。この規定があることと、実際の職場で質問をどう受け取られるかは別の話だと私は思います。「法律に書いてあるから気まずくならない」とまでは言えません。

もう一つ、説明の残り方です。令和3年の調査では、説明方法は「個別の問合せに応じて口頭」が76.2%、書面が29.9%。口頭なら会社側から紙は残りません。ここがちょっと不安なところです。いつ何を聞いてどう説明されたかは、自分でメモしておくしかないです。

「正社員と同じ仕事」は、仕事内容だけでは決まらない

同じ作業を担当している正社員を見て、自分との時給の違いが気になることがあります。ただ、調査でいう「職務が同じ」は、目の前でしている作業が似ているという意味だけではなく、業務の内容と責任の程度の両方が同じであることが条件です。難易度や求められる能力に加えて、トラブルが起きたときの臨時・緊急の対応、ノルマや権限の範囲まで含めて判断されていました。令和3年の調査で、正社員と職務が同じパート等がいる企業は21.5%。その企業のうち、時給が正社員と同じなのは46.9%、低いのは41.3%で、低い企業のうち正社員の8割以上の時給だったのは20.9%です。会社の規模でも違いが出ていました。「今後も説明する予定はない」とした企業は、従業員5〜29人で18.7%、1,000人以上で3.4%。「同じ仕事なのに待遇が違う」と感じたら、もやもやするのは分かりますが、比べている職務が本当に同じなのかと、会社側の説明の両方を見てからです。

40代女性では、実際に職場を変えている人もいる

今の会社で正社員への転換を調べる方法はありますが、別の勤務先へ移る人もいます。厚生労働省の令和6年雇用動向調査では、2024年の女性の転職入職率は40〜44歳で10.2%、45〜49歳で10.7%で、同じ年齢の男性はそれぞれ6.8%、6.0%です。女性40〜44歳ではパート10.5%、一般労働者10.0%で、45〜49歳ではパート14.1%、一般労働者8.3%となっていました。辞める理由も一つではありません。女性40〜44歳では「給料等収入が少なかった」が15.1%、「介護・看護」が8.1%。介護・看護は他の年齢階級では0.3〜4.0%なので、この年代で目立って高い。45〜49歳では「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」が15.3%、「定年・契約期間の満了」が12.9%です。

今の会社で転換制度や待遇差について確かめる人もいれば、40代女性には実際に外へ職場を移している人も少なくありません。外に出る側の話は、40代の転職エージェント選びと、40代後半・離職期間あり。登録した直後の2週間に何が起きるかに分けて書いています。


この記事で使った資料

  • 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号)第13条・第14条 — e-Gov法令検索(2026-09-13にAPIで条文取得)
  • 厚生労働省「令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査の概況」(令和4年11月25日公表・令和3年10月1日現在。事業所調査の有効回答15,263事業所・有効回答率51.9%) — 厚生労働省(2026-09-13取得)
  • 厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」3 転職入職者の状況(2024年1年間) — 厚生労働省(2026-09-13取得)